お知らせ
この改造記事は,1996年3月号のCQ誌「アウト・ドア」誌面で紹介したものです。
情報が一部変更となっている場合がありますのでご了承ください。



***振り出し式アンテナ改造***



 移動運用愛好者の皆さんへ
モービル移動・山岳移動にとっても便利 


 JG1KTCの  「 ア ウ ト ・ ド ア 流 」 ア ン テ ナ 改 造  

簡単と思うような改造でも, 「言うは易く行うは難し」で,
取りあげても実際に行う方は多くないようです.
でも「アウト・ドア流」は,簡単が基本,筆者自らが行い
自信がもてる改造のみ 紹介しますので「行うも易し」です.
ぜひご活用いただきたいと思います.

  既 製 品 の 現 状
50MHzの小型ビームアンテナは,数社(コメット・マルドル・第一電波・ミニマルチなど)から発売されていますが,HB9CVタイプが主流だと言っても過言ではありません.
ただ,分解してもエレメント長が1.5mもあったり,フェーズラインやショートバーの取り付けに時間を要したりで一部の商品を除いては移動運用に「手軽」なイメージがありません.
自作するにも時間を要し,再現性の問題(いつも満足のゆく性能が得られなかったり,移動先でコールバックがなかったりすると不安になることも多い)もあり既製品に勝ることは難しいとも言えます.
移動運用は,標高というタワーから運用できますので,無線機の出力よりもアンテナが第一と理解してても,筆者のような怠け者は,ポイップアンテナ感覚で手軽にいつでも運用できるように車に常備し,山岳移動にも手軽に活用したいと欲張ったことを考えています.

A 5 0 2 H B
第一電波工業 から発売されている50MHz位相給電タイプ2エレビーム(A502HB)をコンパクトに変身させました.
このアンテナの特徴は,フェーズラインが組み立ててある(組み立ててあるのはこれだけ)など,部品点数も少なく設営が簡単な点です.
しかし,収納時のエレメント長が1.5mほどもあり,車のトランクにすっぽりとは収まりません(3ナンバーの普通車のトランクにもうまく収まらない)し,しっかりした造りで山岳移動にも不便を隠せません.

エ レ メ ン ト
1.5mのエレメントを切断し,
収納式(振り出し式)に改造しました.
収納時のエレメント長を約80Cmにし,ブーム長とほぼ同じ長さにしました.
これで,車のトランクにもすっぽりと収まりますし,山岳移動時も,手に持つことなくザックの底や横に取り付けて登山道を歩くことも可能となります.
さらに,組み立てもびっくりするほどに簡単,これぞ「移動運用アンテナ」と言えるようになりました.

F B に 完 成
写真3のようにたいへんコンパクトに完成しました.
使用するときは,エレメントをマークが見えるまで中から引き出し,締めリングのネジ締めで完了です.
SWRも改造前と変わらず,実際に運用しましたがFBです.
また,収納は市販のマジックベルト等を用いれば簡単です.

■ 改 造 の キ ー ポ イ ン ト■

1, A 5 0 2 H B
このアンテナは,しっかりした造りですから,固定局用の商品だと勘違いされる方があるかもしれません.
でもこの商品は,面倒なフェーズラインを組み立て結線済みにしたり,組み立てに工具が不要である点など,移動運用用に重点を置き,固定用にも対応するように考えられています.
(なかには,コンパクトと言うだけで,組み立てが面倒で移動運用には適していない商品もある?)
その点,この商品の発想は素晴らしいと言っても過言ではありません.
ただ移動運用専用とするに残念なのは,エレメント長が1.5mもあったり,マスト取付金具が頑丈である点です.
そこで,エレメントの伸縮,マスト取付金具の軽量化(Uブラケットに取り替え)を行って移動運用専用アンテナとしたいと考えました.

2, 締 め リ ン グ(エレメントアダプター)
今回の改造の最大のキーポイントは締めリング(エレメントアダプター)です.
この部品を使用しないで,エレメントに穴を開けてネジ穴を溝きりしビスで内側のエレメントを固定する改造でしたら何回かの使用でネジ穴がバカになり長期間使用に耐えられません.
そこで,何百回(ちょっとオーバー?)の組み立て分解にも耐えるような改造方法はないかと考え,この締めリングの使用を考えました.
この締めリングがあれば,内側のエレメントをどの長さの位置でも固定できますのでFBですし安心でもあります.
実際のところ,こんな部品(需要の少ない品です)が市販されている訳がありません.
某社のパーツに,私が考えていたものと同様の物がありましたので,東京秋葉原のカクタを経由して入手して改造することにしました.


■ 改 造 に は 下 記 の 物 が 必 要■

@アンテナ A502HB   売価8〜9000円位     1本
   (ダイヤモンド50MHz2エレHB9CV) 
A径が10mmのアルミパイプ(2mもの)          2本
B締めリング(エレメントアダプター)            4コ

改造にご協力いただいた東京秋葉原のカクタでは,@とBについてご相談に乗っていただけます。
必要な方はお問い合わせください.

バルレック株式会社(旧カクタ)
〒101  東京都千代田区外神田3−13−8
  п@03-3253-8121 松崎さんを必ずご指名のうえご相談ください


 
改 造 手 順

■改造はご自身の責任の下に,ご理解のうえ行ってください■

@A502HBのエレメント(12ミリ径)を切断 
 給電・反射器エレメント共に中心部(引っかけ式エレメント受金具)から78cmに切断

A準備したアルミパイプ(10ミリ径)を切断
 2m長のものを2本準備しますが,77cm長4本に切断(この長さにすると,引っかけ式エレメント受金具にエレメントを取り付けたままで,収納・振り出しが簡単にできます.
 中の10ミリ径エレメントが外の12ミリ径のエレメントから約1.5p外に出る形で収納できるので,エレメントが中に入り込まずとても便利)

Bエレメント(12ミリ径)に締めリングの取り付け・穴開け
 @で切断したエレメントの切断した側から約15ミリの位置に径が5ミリの穴を開けます.
 (電動ドリルがあればFBですが,エレメントの肉厚薄いので,キリで穴を開け,金丸ヤスリで穴を大きくすることで十分可能,筆者もそうしました)
 そこに締めリングを取り付ける.(これでネジ穴を気にする事なく組立・分解が可能)

C78pに切断したエレメント(12ミリ径)の中に,77pに切断したアルミパイプ(10ミリ径)の差し込み
                                           10mHに上げてのQRVも楽々!!

D振り出したエレメントの位置をマジックインキなどでマーク.
 給電エレメントは中に差し込んだ10ミリ径のエレメントを57cm振り出した位置,反射器エレメントは中に差し込んだ10ミリ径のエレメントを72cm振り出した位置にマジックインキなどでマークする

  以 上 で 改 造 終 了.

使用する場合は,引っかけ式エレメント受金具にエレメントを取り付けて,次に,中からエレメントを引き出すようにすれば,設営に何分もかかりませんし,分解・収納がとても簡単です.


お 知 ら せ

この改造記事は,1996年3月号のCQ誌アウト・ドアで紹介し,多くの反響がありました.
JG1KTCのアイデアを基に,ラディックス社よりコンパクト収納可能なHB9CV(RY-62V)が発売されていますので併せて移動運用の参考にしてください.

◆追記 付属のマスト取り付け金具を簡単なUブラケットに取り替えることで,約400gの重量の軽量化が図れます.
穴開けが必要ですが,山岳移動を考えて取り替えてはどうですか.
この記事を基に改造されてのご感想やご意見,運用の結果などをメールや掲示板で教えてください.お待ちしています.

● ご注意
改造記事の無断転載を禁止します.また,このアイデアを基にほかの改造について紹介する場合は,その旨を明示ください.
ローカル局への紹介大歓迎です.多くの人に教えてあげてください.
その場合「アウト・ドアのアンテナ改造」と明記してください.



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